有害化学物質からの防御。
化石燃料から排出されるCO2による地球温暖化がクローズアップされていますが、一方では石油化学製品から排出される有害化学物質の排出が人体と野生生物へ影響を与えている事が非常に問題視されています。
社会は有害化学物質の排出をできる限りくい止め、地球環境を化学汚染から守る努力を行っていますが、有害化学物質による被害は後を絶ちません。むしろシックハウス症候群寸前の過敏症顕在患者が日本では100万人いるとも言われています。
その様な社会環境の中、私どもは身近な室内環境汚染にも意識を向け、有害化学物質からの防御を真剣に考えなければならないと考えています。
シックハウスとは?
近年、建物の高気密化や化学物質を放散する建築材料・内装材の使用により、新築・改築後の住宅やビルにおいて、(V.O.C類)有機化学物質の室内空気中濃度が高くなり、居住者が頭痛やめまい、のどが渇く、目がチカチカする、吐き気がするなど様々な症状を訴える例が多数報告されています。
「シックハウス症候群とはこのような症状に代表される健康障害を総称する用語です。」
広い意味では化学物質によるものだけでなく、ダニやカビなどに起因する気管支喘息や皮膚炎などの
アレルギーもシックハウス症候群に含まれます。
シックハウス症候群全般の対策としては、安全な建材・内装材の選定や
換気設備など住まいの構造設備はもちろんですが、換気に心がけ、
適正な温湿度管理や清掃を十分に行うなど、住まいに関わる注意も必要です。
◇シックハウス症候群(SBS)とは... Sick Building Syndrome の略。
Sickとは、「病気の」という意味で直訳すれば、「病気の建物 症候群」となります。
住居内での室内空気汚染に由来する様々な健康障害を総称して、シックハウス症候群と呼びます。住宅の高気密・高断熱化などが進み、新建材と呼ばれる化学物質を含有した建材を多く用いたことにより、室内空気が化学物質などに汚染され、そこに住まう人の健康に悪影響を与えてしまうようになってしまいました。
シックハウス症候群は原因も症状も多種多様で、ひとつの原因やひとつの症状、ある一面からの定義だけでは正しく理解する事ができません。発症のメカニズムなど、まだまだ未解明な部分も多くあります。
◇VOCとは...
揮発性有機化合物;Volatile Organic Compounds の略。建材,接着剤,家具,ヘアスプレー,防虫剤などの成分として住まいの空気中に含まれている揮発性の化学物質。
シックハウスの歴史
1970年代
アメリカでオイルショックによる燃料高騰により、
省エネが推奨され、多くの事務所ビルでは室内の
換気量を大幅に削減された。その結果、原因不明
の体調不良者が続出。
1979年
デンマークのファーガソン博士らが
『シックビルディング症候群』という症状を発表
1980年代
1980年代に入り、アメリカでは
シックビルディング症候群が社会的問題となり、
多くの調査研究が進んでいく。
日本でも
食器棚家具などから健康障害を引き起こす可能性が
ある化学物質ホルムアルデヒドが大量放出されていたとして業界で自主規制がかけられる。
1980年
JAS(日本農林規格)において、
低ホルムアルデヒド合板やフローリングの規格制定
1990年代
1997.6.3
厚生省ホルムアルデヒドに関して
室内空気濃度基準値を設定
徐々に増え現在13品目
2003年
2003.7.1
シックハウス対策のための規制導入
改正建築基準法が施行
建築現場における、VOCの規制状況
建築現場における、VOCの規制状況
ホルムアルデヒドに関する建材、換気設備の規制 | ||
①内装仕上げの規制 | ②換気設備設置の義務付け |
③天井裏などの制限 |
クロルピリホスの使用禁止 |
日本の建築現場において、完成物件の有害化学物質濃度数値に関して、一番厳しいのが学校です。
発生する確立の高い6物質の濃度測定を義務付けています。
グレーゾーンの物質 アセトアルデヒド
シックハウス症候群の原因として考えられる有害化学物質であるVOC(揮発性有機化合物)の中で、
特にあまり知られていないのですが、アセトアルデヒドは一部の天然木からも発生します。
また、植樹から加工や輸入される段階で使用される薬剤、防虫剤や接着剤などに含有する材料と
木材が反応してアセトアルデヒドが発生しているケースもあります。
厚生労働省の室内空気中アセトアルデヒド濃度の指針値は48μg/㎥(0.03ppm)ですが、
国土交通省はシックハウス対策が盛り込まれた改正建築基準法の制定当時、WHOが
ガイドライン値0.03ppmを0.17ppmに訂正する動きがあるとして
住宅性能表示基準からアセトアルデヒドを除外してしまいました。
VOCから見る 今と昔の住宅の違い
古来から、日本の伝統的な木造住宅に住んでいて、健康被害を受けたという話を聞いた事がないから大丈夫と思っている方も少なからずいらっしゃるかと思います。しかし、ズバリ言うと、「住環境(家造り)が変わった」ということに尽きます。
世界中で問題視されているVOC
現在、有害化学物質の過敏症顕在患者が日本では100万人、中国では毎年200万人以上の青少年が
有害物質に起因する呼吸器疾患によって死亡しているとの報道もあります。
ヨーロッパの一部の国では、学校や病院等の公共施設に関して、ホルムアルデヒド等の有害化学物質の
濃度規制と定期的な濃度測定を法律的に義務付け、違反すると罰則規定が与えられるなど、
ますます世界的にも深刻な問題として取り上げられるようになって来ました。
また、木造住宅の主流な日本ではアセトアルデヒドは避けていけない問題だと考えています。
天然木と集成材、輸入材と国産材、F☆☆☆☆材料など様々ですが、どれが良くてどれが悪いのか
という事ではなく、完成した住宅の室内の空気環境がどうなのかをしっかり測定し引き渡しをする
建物の有害化学物質濃度を把握していく必要がある時代になってきています。